降臨者7

野次馬の輪をくぐることも、押し退けることもせず、カインは輪の中心にキレイに降り立った。当たり前だ、背中に生えた白い翼で、実際飛んでいるのだから。 その光景は、さながら天使の降臨のようだった。天使の降臨なんて見たことはないくせに、なぜかそう思...

降臨者6

部屋には一応トイレとシャワーがついていた。驚いたのは、トイレがきちんと水洗式だったことだ。 トイレ自体が年代物なのか、お世辞にもきれいとは言いがたいが、水もきちんと通っているし、設備としては問題ない。水を流すスイッチには、手のひら大の青い魔...

「3.14」

エルーニャ置いていかれたエルーニャの独白。「2.14」の後日談。 落ち込む日々は案外長続きしなかった。そういう自分を自覚するとき、エルーニャはやはり自分は人間ではないのだな、と思う。人間はもっと、複雑に思い悩むはずだから。しかし、別に自分が...

「2.14」

まりあとエルーニャバレンタインくさい小話。 キッチンからやたらと甘い匂いが漂ってくる。エルーニャはその匂いに誘われるようにして、寝床から這い出た。階段を下りると、キッチンに立っていたのはエルーニャの予想とは違う人物だった。「何してるのー」「...

「気になる尻尾」

ナギカとカインとエルーニャナギカが尻尾を見て悶々としているだけの小話。 だんだんと客が疎らになり、やがては誰もいなくなる。それぞれが夜を恐れてねぐらへ帰る、店を閉めるにはちょうど良い頃合いだ。基本的に、ここの主人は後片付けというものをしない...

「徒為」

アゼルとアインスタックフェルト二人で料理を食べているだけの小話。 彼の作る手料理はおいしい。 アゼルは悪魔になっても、人間だった頃の名残で味覚だけはヒトのそれに近い。おいしい、美味しい、おいしく、感じられる。 出されたのは質素な野菜の塩スー...

「噂」

ジゼルと天使たち ジゼルはいつものように端の塔へ向かった。公に訪れるのは良くないと、わかっているがどうしても、確かめなければならないことがある。 それは、歌をサボっていた下級天使たちの戯れ言だった。「聞いたか? せっかく塔に閉じこめていたサ...

降臨者5

「う~ん……」 目を開けないまま、大きく伸びをする。手や足に触れる感触は柔らかで、少なくとも荷台やごつごつした大地に直接横になっているわけではない事がわかる。瞼に刺さる光から、今が昼間だということも。 目を開ければ見慣れない天井だ。所々雨漏...

降臨者4

「ご協力、ありがとうございましたー」「えっ! もう終わり?」 気合いを入れ、覚悟を決め、荷物検査と身体検査が行われるというテントに、もう丸裸にされるのを覚悟で入っていったというのに。「はい、おしまいです」 猫耳の生えた検問所のお姉さんの笑顔...

降臨者3

「それで、結局どこに向かってるのさ?」 進んでも進んでも緑しか見えない。無言で、ただひたすらと、小一時間は歩いただろうか。いい加減限界だった。 ……体力的にも。「どこって……アスターだよ」「それはどこだ?」「アステリアの首都」 んなもん知る...
スポンサーリンク