アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

「怖い話しよっか」

投稿日:2012年7月14日 更新日:

ナギカとカインとエルーニャ

真夏の夜の……怖~い話。
※表現の手段として、一部残酷描写・恐怖を煽る文章を含みます。

 夏だっ! 海だっ!! さて……

 怖い話でもしようか……

 カーテンを閉めきった薄暗い部屋の真ん中に、雰囲気を出すためにロウソクを一本立てて火を灯す。
ぼんやりと浮かぶのは、不安そうな顔をしたカインとエルーニャと、語り手のナギカだけだ。

 怖い話をするには人数が少ないが、エルーニャの興味と予想以上に怖い話に対して拒否反応を示すカインが面白くて、ついに実行されることとなった。というか、主にナギカが強行した。
暑い夏に納涼はつきものである(※ナギカ談)

 まあ、アステリアに四季があるかどうかは、良くわからないのだが。この日のジメッとした空気とまとわりつくような熱気が、蒸し暑くて過ごしにくい日本の夏の夜を連想させる。
まさに、怖い話をするにはうってつけである。

 開始前なのに既に雰囲気で死にそうになっているカインを横目で見つつ、ナギカはひとつ息を吸って低く、静かに話し始めた。

「これから話すのは、私の通う学校の隣の高校……S校であった本当の話……」

 今でこそ共学になって、校舎も新築してピカピカになったS校だけど、ほんの六年前はボロボロの木造校舎で男子校だった歴史があるんだ。
それが、六年前突然男女共学になって校舎も改築したんだよ。

 凄く急な話だよね。在校生にも特に連絡は無かったらしいよ。
でも、それは大きな混乱にはならなかったらしいんだ。

―――何故かって?

 実は当時のS校は、別の話題で持ちきりだったからね。
突然の共学化も新築建て替えも納得の混乱ぶりだったのさ。

 何があったかって?

 殺人事件だよ……それも、猟奇殺人。

 しかも被害者も犯人もS校生だったんだって。
……そりゃ混乱するよね。

 殺人の現場もS校内だし……とんでもない話だね。

 でもさ、その段階ではまだ共学化も新築の話も無かったらしいよ。
……何があったんだろうね?

 あまり公に語られる事はないから、今のS校生は知らないだろうけど……私には大体見当がついてるんだ。

 S校にもさ……あるんだよ。

 学校の七不思議って奴? ……ていうかあんたたち七不思議って知ってる?
大体あれって学校生活を盛り上げるために生徒がでっち上げた作り話だったり、嘘や噂が一人歩きしちゃったものだったり、ある意味定番の、お約束的な不思議現象のことを全部ひっくるめて七不思議って言うんだけどさ。
夜中に化学室の人体模型が歩くとか、音楽室に飾ってあるベートーベンのポスターの目が光るとかね。

 S校も大抵そんな感じだったよ……最初はね。
でも、殺人事件があってから少しずつ変わってきたんだ。
特に、殺人現場になった校舎二階のトイレ……とか。

 カインはゴクリと音を立てて唾を飲み込んだ。

 カーテンは閉めているが、窓は開いている筈なのに、さっきから全然風が入ってこない。
夏の夜特有の、ジメッとした空気は蒸し暑さと不快感を煽るはずなのに、むしろ肌寒い気がするのは気のせいなのだろうか。

 風がないのにロウソクの火がユラユラと揺れた。

「ななふしぎ……」

 エルーニャは確認するようにつぶやいた。
ナギカが行く学校とやらの話は何度か聞いたことがあるが、まさかそんなに怖い所だったとは!

「気になる? でもその前に、殺人事件の事を話してあげるよ」

 六年前の夏……丁度今くらいの季節。
夏休みだと言うのに、S校は部活や文化祭準備の生徒で溢れていた。
三階建ての木造校舎の二階には、二年生の教室がある。

 そこに彼はいた。
2-Aのシンジ。

 彼は頭が良かったんだ。ただ……
少し痩せ気味で性格も暗くて、いじめられ体質だったようだけどね。

 たぶんその日は、他の人の代わりに文化祭の準備にかりだされたんじゃないかな。彼の当番では無かったからね。
でも、間の悪い事にシンジをいつもいじめていた2-Bのリョウタも、この日学校に来てたんだよ。

 数学で赤点をとったリョウタは補習で来てたんだけど、当然夏休みにわざわざ学校に行くなんて、彼にとっては面倒以外の何物でもないね。
リョウタのイライラは、この日最高潮だったのさ。

 そこにふらりとシンジが現れた。
―――リョウタのストレスを解消するための獲物が。

 リョウタは文化祭用の横断幕を準備していたシンジの肩を掴んで、振り向かせた。
予想していなかった人物が目の前にいて、シンジの顔は恐怖でこわばった。

「ちょっと便所まで付き合ってくんねえ……?」

 それはいつもの始まりの合図だった。

 シンジは強引にトイレに押し込まれた。
S校の男子トイレは、大小の区別がなくて全て個室なんだ。
多分いじめに配慮したんだろうけど、個室の方がタバコもいじめもやりやすいんだよね。

 そんな訳で個室に連れ込まれたシンジは、そこでリョウタから暴力を受けた。
蹴る殴るはあたりまえ。
リョウタが赤点を取って補習を受けた事とシンジはまったく関係ないけれど、気が治まるまで殴って殴って、殴りまくった。
シンジはいつも殴られているせいからか、出来るだけ抵抗しないように大人しく人間サンドバッグになっていた。じっと耐えて、リョウタの気が済むのを待っていたんだ。

 やがてリョウタの拳がシンジの鼻血やら何やらで赤く染まった頃に、ようやくリョウタはシンジに飽きて背を向けた。

 シンジは……この時をずっと待っていたんだろうね……

 彼は文化祭の横断幕を準備していた。
使う道具は大体みんな床に置く。でも、シンジはポケットに入れていたんだ。

 道具を置く前にリョウタに連れて来られた。そう、だから彼のポケットの中には……

 リョウタは目を見開いた。

 今まで大人しくしていたはずのシンジが、突然殴りかかってきたのだ。
思わぬ反撃に後ずさろうとするが、トイレの個室の中はそんなに広くない。
あっという間に距離を詰められ、構えようと前に出した腕に灼熱が走った。ボタボタとシンジのものではない血が床を汚す。

「ひっ、お前……!!」

 シンジの手に握られていたのはカッターナイフ。
その刃が赤く濡れているのは、たった今、切られたからだ。腕を、シンジに。

「いつもいつも、ぼくの事馬鹿にしてっ……イヤな事は全部押し付けて、機嫌が悪ければ殴って、良くても関係なく殴る! そうやって僕の事いじめて……そのせいで、他のクラスのヤツにもいじめられるようになったんだ!! 全部! 全部お前のせいだっ!!!」
「待てっ……悪かったよ、だから……!!」
「……殺してやるっ!!」
「やめっ……ぎゃあぁぁぁっっっ!!」

 大型のカッターナイフがリョウタの顔面目掛けて振り下ろされた。立て続けに何度も。

「死ねっ! しねっ!! シネェ―――!!!」

 血しぶきが辺りに飛び散り目に入っても、シンジはナイフを振り続けた。
狭い個室内が血で真っ赤に染まっても、耳や目や指や内臓が辺りに飛び散っても。リョウタが動かなくなってただの肉塊になっても……何度も、何度も……

「……その後シンジがどうなったのかは、実は判んないんだよ。リョウタも……多分『リョウタだったモノ』の一部はトイレの個室内で見つかったけど、頭とか、体とか、具体的な部分を示すものは未だに指一本見つかってない、らしい。……場所がトイレな訳だし、切り刻まれて、流されちゃったのかもね……」

 カインは夏なのに毛布をすっぽり頭から被っている。良く見ればガタガタと、少し大げさなくらいに震えているのが判る。
そこまで過剰に反応されると、サービスしたくなるのが語り手精神と言うものだろうか。
ナギカはその毛布を引き寄せると、カインの耳元にわざと生暖かい息を吐きながら続けた。

「シンジとリョウタはいなくなっちゃったけど、それからというもの、S校の二階のトイレは曰くつきでさ……」

 もちろん消毒や、殺人の痕跡を消すための特殊な清掃は業者によって念入りに行われた。
血の染み一つない、むしろ以前よりキレイになったと言って良いトイレだが、やがて段々奇妙な噂が立ち始めた。

 トイレの個室は三つあり、その内、入り口側の……殺人現場となったトイレから異臭がし始めた。

 水洗とはいえ、もちろん汚物を扱うトイレであるから、掃除がサボられればいつかは臭うものだろう。が、異臭がし始めたのは業者が清掃を完了した翌日で、上下水道のパイプ内すら磨いた後だというのに臭うのはおかしな話だった。

 臭いは日に日に強くなり、二階のトイレ前を通っただけで気分が悪くなる程の強烈な悪臭を放った。
それは、モノが詰まって腐ったような臭いだった。
学校は再び業者に清掃を依頼した。

「業者も流石にこの異臭はただ事じゃないってんで、便器を一旦解体して、念入りに清掃したんだ、そしたら……」

―――腕が出てきたのである。

 肉は腐りかけて、一部骨が覗いているそれは人間の腕だった。
結局また警察を呼ぶ羽目になり、出てきた腕は事件の証拠として押収された。しかし結局、誰のものかは状態が悪くて判らなかったという。

 そして事件は解決しないまま、一応の終息を迎える……はずだった。

「ま、さすがに人間の腕が出てきたトイレなんて、清掃しても誰も使いたがらないよね。一度解体までしてるから、ついでってことで業者呼んで二階のトイレ部分は丸ごとリフォームしたらしいよ。今度こそ異臭なんて発生しないはずだってくらいピカピカの新設備にね」

 どんなに悪い噂が流れていようとそこは高校生だ、中には度胸試しも含まれていたが、新しいものには多少なりとも興味があるもの。新設のトイレはすぐ生徒に受け入れられた。
が、しかしまた異臭がし始めたのである。しかも、悪臭の度合いは以前より増していたそうだ。

「場所は三つある個室の内の、入り口側……つまり、殺人現場となったトイレからね」

 ところが、今度は異臭だけでは済まなかった。
流してもいないのに、トイレから「ゴポッ、ゴボッ……」と、何かがつまったような音が聞こえる。しかも、なんだかそれはまるで溺れた人のうめき声のようにも聞こえるというのだ。
さらに異変は相次いだ。今度はトイレが流れなくなってしまったのだ。しかもそれは二階のトイレだけじゃなく、S校の全ての下水が流れなくなってしまった。

 いやぁ……悲惨だよ? だって下水全て流れないんだよ? トイレはもちろん流し場も全部。まぁ、汚いっていうのもあるけど、ちょっと想像したくないよね。
これはもう学校の下水の元の配管が、何かで塞き止められてしまってるんじゃないかってことで、また前とは違う業者を呼んだんだ。
今度は、ちょっとした大工事になった。何せ配管のどこに何が詰まってるかわからないからね。
それで、業者はやっとの思いで配管を詰まらせていたものを取り除いた、それは……

「……なんだったと思う? 実はね、配管の一部にはヘドロとか、そういう当たり前のものも確かに詰まってはいたけど、腐った肉とか骨片とか、なんだかそういった生き物的なものがびっっっしりへばり付いていたらしいよ。そして見つけてしまったんだ、S校の配管を詰まらせていた元凶をね」

 いたるところに肉片のへばり付く配管を、何も知らない業者さんたちはどういう思いで清掃していたんだろうね。

 こびり付いた肉色組織を除去していると、ひときわ大きい『肉塊』が配管を塞ぐように詰まっていた。
それを見た作業員はこの塊が元凶と思い、手でその肉塊を引き上げたんだ。
それはちょうど、人の頭くらいの大きさで……そう、腐敗が進んで、頭蓋骨がむき出しになっていたけれど、
それは人の、生首だったんだ……

「ぎゃぁぁぁっ!! もういい! もういいよわかったよ!」
「ナギカこわすぎるのー! こわくて寝れなくなるのー! ……あとカインちゃん、耳元でうるさいのー!!」
「いてぇっ! エルーニャ! 連打しないで!!」

 せっかくのムードも、夜中にあるまじき声量で騒ぎ始めた二人にぶち壊されてしまった。
しかしここまで話して、ちゃんと怖がってもらえたのでナギカは満足していた。怖い話は、怖がってナンボである。

「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「こ、こんだけ怖がらせておいて寝ろって言うのか! ナギー今日一緒に寝ようよー!」
「一人で寝な」
「酷い、冷たい……」
「ナギカ、そのお話はそこで終わりなのー?」
「うん。S校はそんな事件があったせいで校舎ごと改装することになったんだけど、改装してからは変な噂はなくなったらしいね。まぁ、事件は結局未解決のままらしいけど……って私もこの話は人づてに聞いたんだ」
「ふーん……」
「それにさ、よく考えるとおかしいだろ。下水管から首なんて丸ごと出てくるはず無いじゃないか。トイレの下水管なんていうのは人間の頭部が流れるほど広くは作られてないんだよ。それに、シンジの凶器はカッターナイフだよ? いくらなんでもカッターナイフで人体はバラバラになんて出来ないよ」
「ふぅーん……」
「エルーニャ……一緒に寝よう?」
「エルーニャはナギカと寝るから、カインちゃんは向こうに行くの」
「うぅっ、みんなひどい……」
「おやすみなのー」
「おやすみー」
「こ、こわい……」

 しかし、この話にはナギカの知らない続きがあったのである。

 大規模な工事をすることになったS校は、校舎を半分ずつ改修することで、在校生が授業を受けられないような事態になることを避けた。が、改修している間も奇妙なことは続いていたのだ。

 校舎の下水道が全て使えなくなってしまったため、水道施設や仮設トイレは校庭の一部に置かれる事となった。
すると、二階や三階で授業を受けている二、三年生はトイレに行くのにいちいち一階まで下りなければならないのである。つまり、めんどくさかったのだ。
そして、中にはどうしても間に合わないと、悪臭漂う中、使用禁止のトイレを使う不届き者もちらほらいたのである。

 用を足し終えると、どうも個室の外に人の気配があることに気づく。
しかしこの悪臭だ。こんなトイレを使うものなど、自分以外にいるはずがないと高をくくっていると、そこでとんでもないものを見てしまうことになる。

 S校指定の白いシャツを血で真っ赤に染めた、片腕と頭のない男子生徒の姿を……

「……ねぇ、リョウタくん……ごめんね、だから……僕の、腕と頭……返して……返し、て……カエ、シテ…………」
「う、うわあああぁぁぁっっ!!!」
「カエ、シ、テ……カ、エシ、テ……」

―――あなたの学校、過去に改修していませんか?
ひょっとしてそこ、S校かもしれませんよ……

「うぅ、やっぱり一緒に寝ても良い!?」
「カインちゃんうるさいのー」
「ううぅ……」

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