アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

降臨者12

投稿日:2015年5月14日 更新日:

 開いた扉の向こうにはお約束のレッドカーペット。一番高いところにお約束の玉座。その玉座に座るのは当然王様だ。王国アステリアの王。

 その風貌は予想してはいたが、横方向にやたらと体格の良いおっさんだった。見た目年齢三十代というところか、威厳のために伸ばしたひげが少しいやらしい雰囲気をかもし出す。

「行くよ、ナギ」

 小声で伝えてきたカインに対して小さく頷く。その横で待機していたノアの民もすれ違いざまにぼそりとつぶやいた。

「さて、何度も同じ手が通用するかな?」

 無言でノアの民の横をすり抜け、カインと並んで二人王の前へ。ここからはしゃべらない、しゃべらない。
あ、ひざまづいたりしなくていいのかな、この世界の礼儀作法については何も知らない。先に確認しておけばよかった!

 カインは無言で王の前の少し離れたところに立ち、そのままの姿勢でじっとしている。ナギカも、特に何も言われないので失礼にならない程度につっ立ったままの姿勢で居ると、逆に王の方がその玉座から立ち上がった。
が、立ち上がっただけでまた玉座に深々と座りなおした。あまりにも近づかれたらどうしようかと思ったが、この距離なら女だとはバレないだろう。

「カイン、戻ったか……待ちわびたぞ!」

 どことなく声色が明るい。先ほどノアの民が言っていた「首を長くしすぎて待っている」というのもあながち間違いではないのかもしれない。頭のてっぺんからつま先まで、遠慮もなしに突き刺さる視線が痛い。
目深にフードを被ってはいるが、王が舐めるように顔を確認してくる視線を感じる。思わずうつむくが、視線は外れない。

「今回はまた、感知してから一段と遅かったな」

 咎めるような声色ではなく、独り言のようだった。カインはそれについては何も返答しない。それより早速本題を切り出す。

「マジノ王、今回も残念ながら降臨者は男だ。もしかしたらソフィアの好みも変わったのかもしれない」
「何? それは困る……何とかソフィア様に話をつけることは出来ないのか!?」

 今度こそ王は立ち上がった。あまりにも必死な様子に、そんなに降臨者と結婚したいのかと鼻で笑ってしまう……もちろん、心の中でだが。

「まあいい! 異界より降臨せし者よ、名はなんという?」
「ナギだ、こいつは東の森で降臨した瞬間に魔物に襲われて口がきけない」

 ナギカの代わりにカインが答える。
いつの間にか口が聞けないという設定も出来上がっていたらしい。そういうのは事前に教えておいて欲しかったなと思いつつ、何が何でもこんな男と結婚だなんてごめんなので黙って耐える。

「魔物に? それは災難だったな……まあ何にせよ、このアスターは君を歓迎しよう。今後の身の振り方は決まっているのかね?」

 男と聞いたからもう興味も失せたのか、王の口調もどことなく投げやりになり、あれほど強く感じていた視線を一切感じなくなった。なんて切り替えの早いヤツだ!

「戦力外だし、頭も悪い。うちで引き取ろうと思ってる、いって……!」
「そうか……それは残念だ」

 あんまりにもあんまりな説明に、思わずどついてしまった。だが王は特に気に留めた様子はない。

「もしもソフィア様に会ったらよろしく伝えておいてくれ」
「おれからは……何とも」
「では、また降臨者の気配を察知したら何よりも優先して報告するように!」
「わかった」

 カインのその返事を聞くと、王はナギカを一瞥することもなく、そそくさと部屋を後にした。
どうやらお目通りというのはこれで一通り終わったらしい。意外とあっという間だったな。

「あー疲れた。帰るかー」

 念には念を、無言で頷いた。

 来た道をそのまま通り、ブレイドとセピアの待つ広場へと戻ると、そこにはさっきの白黒ローブのノアの民が居た。ブレイドとは知り合いなのか、親しげな様子だ。

「なんだ、もう終わったのか。てっきりバレて尋問でもされているかと思ったのにな」
「ケイマ、お前……仮にもマジノ王の側近なら王の傍にいろよ」

 カインのイヤミを意に介さず、ノアの民は手に持っていた紙袋をナギカに押し付けてきた。

「降臨者にこれを返したくてな」
「私のノート!」

 そういえば検問の時に没収されていたんだった。
パラパラと中身をめくるが特に何かされた様子はない。ごくごく普通の、女子高生の授業ノートだ。
そういえばうっかりしゃべってしまったが、咎められなかったのでもういいのだろう。

 ノアの民はブレイドから離れてナギカの正面に立つ。

「挨拶がまだだったな、俺はアステリア王国宮廷魔導師ケイマ・フォーマルハウト。宿す霊獣は炎のバクだ、夢を喰う方のな」
「???」
「まぁ、ノアの民は霊獣の姿になったら死ぬから、見せるわけにはいかないんだが」
「えっ!? 私来たばっかりで種族のこととかはあんまり……私はナギカ、よろしく。ノートありがとう」

 たいしたことは書いていないが、素直にノートが戻ったことを喜ぼう。
彼はあらためて見ると整った顔立ちだ。動物の部位がどこにもないので一見普通の人間に見える。
夢を喰う炎のバクって、一体どんなだろう。命と引き換えなら見る機会は無いだろう。

「ナギカ、そのノートの文字は日本語か?」

 唐突にケイマがそう聞いてきた。今現在耳に入っているカインたちの言語も、ナギカには日本語として聞こえているのでちょっとだけおかしい。
しかし文字の日本語はひらがなカタカナ漢字数字が入り混じっているので、ケイマは一体どれの事を指しているのだろう。実際に自分のノートを開いて指を差してみる。

「えっと、これは日本語だけど、こっちは数字で……」
「わかってる。日本語文字は「漢字かな等を複雑に組み合わせたもの」なんだろう。そういう文字を書く降臨者を一人知っている」
「えっ! 日本人がいるの!?」
「『まりあ』だな」
「あっ」

 これから会いに行くって言っていた前の降臨者、日本人だったんだ!

「ねぇカイン、この後その『まりあ』って人の所に寄るんでしょ?」
「あっ、そうだった! ブレイド、帰る準備ー」
「あいよー」

 来た時のようにブレイドのエスコートでセピアの背中のカゴに乗る。
カインは、気がついたらすでに乗っていた。レディへの気遣いの無いヤツめ。

「じゃあねケイマ、ありがとう!」

 別れ際にケイマにお礼を言うと鼻で笑われた。

「ナギカ、ひとつ忠告してやろう。そこに居るカインという男から離れないことだ。そうすれば、死ぬことはまずないだろう」
「それ、色んな人に言われるんだけど……」
「そいつの種族はイソラ。ソフィアに弄ばれた降臨者を導くのが役目だ」
「……そうなんだ?」

 じっとカインを見るが、逆にカインは無言で顔をそらした。
前に聞いた話では確かカインは世界でたった一人のイソラで、降臨者を導くのが役目……なるほど、全然わからん。
でも、これだけ何人にも注意されるということは、カインから離れると相当危ないらしいということは理解できた。見た感じ、あまり守ってくれそうもないけど……

「んじゃあ飛ぶぜーしっかり手すりに掴まっててな!」

 ブレイドのその一言で伏せていたセピアが起き上がり、ゆっくり翼を動かした。
段々高度が上がる中、少ししてカインがケイマに向かってカゴから身を乗り出した。

「ケイマ、ジークが帰ってくる」
「……やっとか」

 カインのその言葉を聴くと、ケイマは飛び立つセピアを最後まで見送ることなく城の中に引っ込んだ。

(そういえば、ジークって誰だろ……前もランカーたちに向けて言っていたような)

 気になってしまったので直接カインに聞いた。

「ねぇ、ジークって誰?」
「そのうち会えるよ」

 即はぐらかされてしまった。
食い下がろうかとも思ったが、カインは遠い目をしてポツリともらす。

「……まりあ、元気かな」
「あー、アレ以来お前は会ってないんだっけか。変わらず元気だったよ、見た目はちょっと変わったけどな。それより、まりあの家に行くのはいいけどセピアをどこに下ろそうか」
「まりあの家の屋上はあいていたはず」
「あそこは竜ターミナルじゃないだろ……まあいいか、でも絶対驚かれるぞ」

 そんなこんなで、個人の家の屋上に強引に大きな飛竜をとめるという事で決まったらしい。そりゃ驚くよ。

 まりあ。日本人で、自分の前に来た降臨者。
とりあえず、会って何を聞こうか考えながら、セピアの上からアスターのゴミゴミとした街並みを眺めた。

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好き嫌いの激しい雑食性偏食家。天使と青色1号が好物。脳みその主成分がSFと人外とファンタジーで出来ている。
絵が少し描けます。小説も書きます。
月の住人と同居中。創作国チョコミン党きのこの山派メーデー民ゲーマー。乗馬はじめました。
最近youtubeにゲーム実況動画投稿中。

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