アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

降臨者11

投稿日:2014年11月15日 更新日:

 ガランと音を立ててドアが閉まる。

 入るときには気づかなかったが、ドアにはプレートが掛けてあり、読めない文字で「オープン」と書かれていた。
読めないはずなのに、なぜその文字が「オープン」だと思うのか、原理はよくわからないがカインの仕業だろう。大体、何でもこいつのせいだ。
カインがそのプレートをひっくり返すと、今度はやはり読めない文字で「クローズ」と読めた。
要するに、これは開店閉店のお知らせ看板らしい。

「札がかかってるから、やってると思ったんだよな」
「後でなんか作ってやるって。それより急いでくれ、日が落ちる前にはアスター王に会わせておきたい」
「はいはい」

 そう言ってブレイドは指笛でどこかに合図を送った。そのすぐ後に、目の前が暗くなったかと思うと突風が吹いた。
思わず目をつむったが、突風はすぐにやみ、代わりに重たいものが目の前に落ちてきたような気配がした。
おそるおそる目を開ける。

「どっ……ドラゴン!!?」

 全身が銀色の鱗に覆われ、緑色のは虫類の目、鼻の上に短い角、頭からは二本の太い角を生やし、背中には鋭い鉤爪の付いた大きなコウモリ状の翼。目の前に現れた生物はまさしくドラゴンと呼ばれるものだった。

 トリト達の使っていた走竜も、形はドラゴンだが翼が無く物足りない感じがしたが、こっちはいかにも伝説の生物という感じがする。何より体長は走竜の二倍以上大きい。

「こいつはセピアって言うんだ、俺の仕事の相棒だよ」

 ブレイドがセピアの鼻に手をやると、まるで猫のように額をすり付けて甘えている。
見た目はどうしても恐ろしいが、人慣れしているのは間違いないようだ。

「銀色なのにセピア……」
「名付けたのコイツな」

 ブレイドが指さす方向にはカインがいた。ちょっとだけドヤ顔されたので無視しておいた。
真っ先に名前につっこんでしまったが、正直かなりどうでもいいツッコミだ。今は他人の名前をとやかく言うよりは、自分をアピールするべきだ。

「そうだ、私ナギカ、アスターまでよろしくね」
「俺は運び屋のブレイド、よろしく! それにしてもその格好、まりあの時と全く同じだな」
「……まりあ?」
「前の降臨者だよ、なあ?」
「……」

 話を振られると、カインは少し何かを考えるように顔を背けた。いやな反応だ。
ひょっとしたら、『まりあ』に何かあったのかもしれない。今詳しく聞くと、自分もへこみそうなのでやめておいた。

「ちょっと高さあるけど、乗れるかな?」

 セピアは伏せをするように腰を下ろしたが、乗る場所である背中のカゴまではやはり高さがある。
カゴまでは足をかける場所があるとはいえ、馬にも乗ったことがないので一人では登れそうにない。ブレイドに手を借りて、ようやくセピアの背中にたどり着いた。
その後に続いてカインが飛び乗ってきた。
見た目通り猫のように身軽だ。ひとっ飛びかよ、解せん。

 カゴは見た目よりしっかりと背中に固定してあるらしく、乗ったくらいでは左右に揺れることはない。ちょっと安心した。
しかしカゴの淵以外に掴まれそうな所がない。つまり、体を固定するには自分でカゴを掴んでいないといけないわけだ。
不安になりブレイドを見るが、彼は頼りない手綱のようなものを握っているだけだ。カインにいたってはカゴすら掴んでいない。

「え、待って、シートベルトは無いの!?」
「オッケー! じゃあ飛ぶぜ、手すりはしっかり掴んでてくれよ?」
「……シートベルトは!?」

 その声もむなしく、ブレイドが声をかけると答えるようにひと鳴きしてセピアが立ち上がり、その巨体からは想像も付かない俊敏さで助走をつけて飛び上がった。大きな翼をゆったり広げて上下させると、それだけでふわりふわりと重力を無視して浮かび上がった。

「と、飛んでる……!」

 見る見る地面が遠くなっていく。
もっとバサバサ翼を羽ばたかせて飛ぶのかと思っていたので、意外だった。それにしてもセピアは優雅に飛ぶ。おかげで手すりを掴んでいるだけでも変に揺れることはなかった。
しかし気分は屋根なし飛行機に、シートベルトなしで乗っている気分だ。正直こわい。

「……そうだナギ、城に着いたら誰に何を聞かれても、一言もしゃべるなよ」
「それとこの格好は関係あるの?」

 頭までスッポリ覆った黒いフードを指差すと、カインより先にブレイドが答えてくれた。

「その格好は頭より、どっちかというと帯の方が重要だよな」
「まりあの時もこれだけで誤魔化せたんだから、いけるはず」
「……ねぇ、だから何の話?」
「いいかげん教えてやれよ、今のアスター王は女の降臨者を探してるんだって話」

 女の、という部分をわざわざ強調して言ったブレイドに、観念したようにカインも話し始めた。

「アスターの王族は代々純血の人間のみで構成される。そして降臨者は混じり気の無い人間であることが多い。要するに、アスター王は降臨者と結婚したがってるんだ」
「えっ」
「いくらおれでも王に命令されたら断れない。今回の降臨者が女とバレれば、ナギもアスター王に差し出さなきゃならない……その格好の帯、背中で結ぶと女、腹側で結ぶと男の意味だ」
「えっ、えっ?」

 服の帯の結び目にそんな意味があったとは驚きだ。
ということは、今のナギカは男装していることになるのだった。

「今のアスター王はそろそろ結婚を焦っている。王の母親が降臨者だったんで、自分も降臨者の嫁さんが欲しいんだろうなー。俺たち運び屋なんかは、飛竜に乗ることを許可されるかわりに国の所有物扱いになる。だから大変だよ、王の命令であちこち降臨者をかき集めさせられてるのさ」
「そ、そうなんだ……」
「カインは降臨者を感知できるから、先手を打ってたってわけ。前の降臨者も……まりあも、男装させてうまく誤魔化してたよな」

 またまりあの話題が出たが、今度はカインの方からナギカを見た。

「帰りに、まりあの所に寄ろうか、ナギの前の降臨者だよ」
「……いいの?」

 てっきり、まりあとやらは生きてはいないのかと思ったが、どうやら会わせてくれるらしい。喜んだのもつかの間、カインの表情は相変わらず暗い。

「ただ、まりあはおれのこと、忘れちゃってるけどね……」

 何があったのかは、やはり聞かない方がいいのかもしれない。

「よし、直接城に降りるぞー! お二人さんちゃんとつかまっとけよー」

 そうは言うものの、セピアは離陸同様、着地の方も優雅で緩やかだ。
降りたのは高い塀の中の、あちこち植物のオブジェが並ぶ広場のようなところだ。中庭なのかもしれない。

 ブレイドのエスコートでカゴから降りると、ちょっと怖いがセピアの鼻をなでて「ありがとう」とお礼を言った。ぐるぐると喉が鳴った気がするが、その横でカインに「しゃべるな」と釘を刺された。
まだ人の姿は無いが、気をつけるに越したことは無い。なにせ、下手すると面識も無い異世界の男と結婚させられてしまうかもしれないのだから。

「俺はセピアと終わるまでここで待ってるよ」
「すぐ戻る」

 そう言ってカインは一直線に歩き出した。慌ててナギカも後を追う。
オブジェが多すぎて、見失ったら迷子になりそうな庭だった。

 やがて視界が開けると、小さな扉の前に男が一人立っていた。
杖を抱え、白と黒の特徴的なローブを着た黒髪の男には、この世界の人にはあるはずのものが無いように見える……動物の耳と尻尾が無いように見える。つまり、人間に見えた。
すると突然カインが足を止めて振り向いた。

「うわ、嫌なヤツに会っちゃったよ……」

 返事をしたいが、しゃべるなと言われているので黙って頷いておく。
それにしても、人間に見えるということは彼がアスターの王様なんだろうか。
疑問はすぐカインに打ち消された。

「先に言っておくけど、アイツは人間じゃない。ノアの民だ」

 ノアの民? 知らない単語に聞き返したいが、声を出すわけにはいかない。
黙ったままカインを見ると、こちらの疑問に気づいたのか説明してくれた。

「人間と違ってノアの民は、生まれたときから霊獣という獣の加護を受ける。その辺の亜人や獣人と違って、人間の姿と獣の姿、そしてその中間に値する亜人の姿に自由に変身できる種族なんだ」
「へぇ……」

 感心して思わず声をあげてしまった。
先ほどのノアの民がこちらに向かって話しかけてきた。

「人間もノアの民も、どちらもこの世界では絶滅危惧種だ……あとコソコソ話すな、丸聞こえなんだよ」
「……チッ」
「お前か、王が首を長くしすぎて待っているというのにまだ待たせる降臨者は」
「今から会いに行くところです」
「さっさと会ってまた男かと絶望させてこい。いい加減小言も聞き飽きた」

 そう言って彼は扉の向こうの通路へ足早に消えていった。別に案内してくれるわけじゃないのか。

「口悪いね、あの人」
「バクだけに口どころか腹も真っ黒だけどな。でも先に行ったってことは王を呼んでもらえるらしい、手間が省けたな」

 先ほどのノアの民の彼が通った通路をゆっくり歩く。

「ここから先は、もう何があってもしゃべるなよ」

 念を押されたので今度こそ口を閉じる。
建物の中はお城にしてはシンプルな方かもしれないが、それでも柱は立派だし、それなりに装飾も豪華だ。
通路の幅は狭い気がするが、まっすぐ敷かれた赤い絨毯のせいで直線の距離がやたら長いような……

「うん、やっぱり待たせすぎたかもしれないな……」

 迷路のような通路の終わりに見えたのは、お約束の、どうやって開けるのかもわからない位の大きな扉。
いかにもココがThe王の間。間違いない。間違いようがない。
扉の前には先ほどのノアの民がイライラしながら待っていた。

「王はすでにお待ちだ、さっさと行け」

 杖でカツンと扉をノックする。たったそれだけで重そうな扉が勢いよく開いた。

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好き嫌いの激しい雑食性偏食家。天使と青色1号が好物。脳みその主成分がSFと人外とファンタジーで出来ている。
絵が少し描けます。小説も書きます。
月の住人と同居中。創作国チョコミン党きのこの山派メーデー民ゲーマー。乗馬はじめました。
最近youtubeにゲーム実況動画投稿中。

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