アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

「世界でイチバン大きな器」

投稿日:2015年3月8日 更新日:

二次創作 TOZ

ED前半後大捏造。ED後半とアリーシャアフターEP丸無視。
※本編の重苦しい雰囲気を大事にしたい人にはおススメしません。

 すべての感覚を閉ざして、マオテラスと眠る。
何十年、何百年かかるかも知れない、そのスレイの選択を止めなかったことに後悔はない。
自分たちはただ、信じて待つだけだ。何十年でも、何百年でも……

 しかしミクリオたちの悲壮な決意とは裏腹に、驚くほどのスピードで事態は進行した。
物語は心の整理をつける前に加速した。
むしろ、爆発して音速を超えた。落ち込むヒマすら与えられなかった。

 つまるところ、マオテラスは強い子だった。さすが五大神筆頭。
なんとスレイと眠りについて、わずか三日で大地の自浄作用を機能させ、大陸を穢れと憑魔の脅威から見事に守ってみせた。

 年単位で待つ事になるのだと、ひょっとしたら生きているうちには会えないのかもしれない……と、覚悟していたロゼと天族たちは、あまりの早さに拍子抜けした。
寝起きのスレイは、つい先日別れたばかりの格好のまま、ひょっこりとレディレイクに滞在中のロゼの前に姿を現した。

「た、ただいま……」
「スレイ!? えっ、マオテラスと眠るってミクリオが……えぇっ!?」

 驚きのあまり、再会の感動はすっかりなりを潜めてしまった。
スレイの決意を悲痛な面持ちで語るミクリオから事情を聞いて、共に目をウルませていた数日(三日)前の、あの涙を返して欲しい。
そんな事より……

「み、みんなー! 早く来てっ、スレイが帰ってきたー!!」

 普通の女の子なら少しは恥ずかしがりそうなほどの声量で叫ぶ。何事かと、街の人も大勢振り返ったが、今は少し別行動をしていた四人の天族たちを呼び戻すのが先決だ。

 実は最終決戦のあと、スレイという器を失ったかれら天族たちは、新たな器も持たずにロゼの周りをうろついていた。もともと霊応力の高いロゼならば、導師の契約をしなくても天族のことは見えているので不都合はなかった。今思えば、器なしでも天族がふらふら出来るほどには穢れがなくなっていたのだな思う。ほんと、マオテラス、仕事早すぎ。

 レディレイク中に響きわたったロゼの大声を聞きつけて、速駆け以上の速度で戻ってきた天族たちが次つぎと集まりだす。

「スレイさん!? おはようございます!」
「ちょっと早起きすぎなんじゃねぇ? なんにせよ良かったよかった!」
「感傷にひたる余裕も持たせてくれないなんて、主人公補正っておそろしいわね」
「エドナ、それは言わないお約束……」

 さらっと世界のことわりに触れるエドナをロゼがたしなめる。スレイはなんだかぼーっとロゼを見つめていた。まだ寝ぼけているのかもしれない。

「ロゼっ! スレイが帰ってきたって……!?」

 最後に足をもつらせながら戻ってきたミクリオが揃い、全員での感動の再会(三日ぶり)をはたした……のだが。

「えっと、ロゼ。もしかしてみんなもう、いる、のかな……?」

「「「「「えっ……?」」」」」

「え?」

「「「「「えぇ―――っ!?」」」」」

 スレイは何の影響か、霊応力のすべてを失っていた。なおかつ、マオテラスの器としての役割を終えたせいか、マオテラスの加護も受けられなくなっていた。つまり、今のスレイには、普通の人間にも見えている天族が見えないのである。

「導師だった頃と逆ね」

 ポツリとエドナがつぶやくので、ライラとザビーダは大きく頷いておいた。導師の宿命……難儀だな。

「マオテラスゥ……」

 ロゼがギリギリと歯軋りをしながら大地を踏みつけている。まぁ、大地はもともと踏むものだから、マオテラスは痛くも痒くもないだろう。

「柄にもなく早起きしすぎて霊応力を持ってくるの忘れたんじゃないの? スレイ、もう一度寝てきなさいよ、マオテラスと」
「エドナさん……聞こえていないと思いますわ……」

 スレイの方は、周りをキョロキョロ見渡しながら落ち着きがない。
「心配かけてごめん、みんな」と、誰もいない方に向かって頭を下げている。
軽いジョークも通じない我らが導師さまに、こんな手の込んだ芝居が出来るはずもない。天族のことは本当に見えてないないし、聞こえてないようだ。

 しかしその導師さまときたら、すぐに顔を上げると「見えないのは残念だけど、もしかしたら一時的に霊応力がマヒしただけかもしれない、きっとそのうち治るよ!」うん、きっとそうだ! と、一人で納得してしまった。前向き思考にいっそう磨きがかかっている。
くそぅ、これが全てを成し遂げた導師の余裕か。あの戦いを経て、我らが導師さまは大人の階段をすっ飛ばしてのぼってしまったようだ。

「そうだけどさぁ……」

 それに比べて……ロゼはちらりと後ろを振り返った。スレイには見えないだろうが、ロゼの目にははっきりと見えている。部屋の片隅に、まるで災禍の顕主の領域のごとく、重々しい空気が渦巻いている。その中心にいるのは、紛れもなく一足先に大人の階段のぼった導師さまの幼馴染だ。膝を抱えて座り込み、すさまじい形相でスレイをにらみ続けていた。
あっ、これ、ほっとくとドラゴンになっちゃうんじゃないかな。
しかし今はマオテラスがきっちり仕事しているのでその心配はなさそうだ。穢れは生まれた瞬間に浄化されるので、ドラゴン化するヒマはない。さすが、五大神。

「見てよ、ミクリオってばすっかり落ち込んでダンゴムシみたいになってるって」
「ロゼさん!? そこはダンゴムシではなく、アルマジロ天族みたいと言ってあげましょう!?」
「フォローも聞こえてないみたいよ」
「そ、そんなぁ……」
「そもそも今のミク坊の状態も見えてねーしな」
「ネガティブミクリオ、略してネガリオね」
「……」

 ミクリオはもはやエドナに傘でつんつんされても反応しない。
これは、完全にいじけている。

 片時もはなれたことのない幼馴染と、これから数世紀単位での別れになるかもしれない。
レディレイクの美しい湖を眺めながら、こみ上げるものを必死に抑えていた時にロゼのあの知らせ。うれしくて信じられなくて、足がもつれて何度か転びながらも駆けつけたのに、なぜかスレイは自分の事が見えていない。今や世界中の誰もがミクリオの事を見つけるのに、よりによってスレイだけ……なんて素敵なバッドエンドだ。マオテラス、ちゃんと仕事しろ!

「すねんなってミク坊。どうせすぐ治るって」

 ザビーダがミクリオの肩をバシバシ叩いてはげますと、ようやくミクリオは顔を上げた。ついでに禍々しいオーラも消える。

「そうだね、スレイのことだ。寝たらそのうち治ってたって事もありうるからな」

 なんだかんだで、この幼馴染の思考はお互い似通っていた。主に方向的な意味で。

「おっ、復活した」
「天族は回復も早いですから」
「ライラ、それ、ちょっと違うような……」
「ネガリオがポジリオになったわ」
「今は静かに、見守りましょう」

 忘れがちだが、何せあの激闘から三日しかたっていないのだから。

「スレイ! 天族のみなさんも、よくぞご無事で!!」
「コラー! さりげなくあたしをムシすんな!」
「災厄の時代を終わらせてくれたこと、心より感謝する。あ、ロゼも」
「何、このとってつけたような扱い!」
「オレだけの力じゃないよ、みんないたから!」

「なっ!」と言って、スレイは見当違いの方向を熱く見つめた。
違う、そっちじゃない。台無しだ。

「スレイ!? もしかして、目が……」
「アリーシャさん、違いますわ」

 アリーシャは従士契約の反動という前科があるだけに、スレイの様子を見て最悪のパターンを想像し、サッと顔色を青くしたが、すかさずロゼとライラが説明をすると落ち着きを取り戻した。
今はもうアリーシャのような普通の人間にも、天族の姿が見えるし声も聞こえている。おかしいのはスレイだけのようだ。

「そんなっ! スレイ、ミクリオ様のことも見えていないのか? あんなに仲がよかったのに……」
「何なのこの子、まっ先にミボの心配なの? ライラ、この子もおかしいわ」

 心配するアリーシャをよそに、当の本人はけろっとして言った。

「ミクリオは見えなくても、傍にいてくれるってわかるから、そんなに心配してないよ」
「まったく、人の気も知らずに」
「今ごろあきれてるでしょ?」
「あぁ、その通りだ」

 当事者であるミクリオが肯定しているので、アリーシャは首を縦にふった。「やっぱりねー」あきれられているというのに、スレイは嬉しそうだ。
なんだかこの二人なら、たとえ一方通行でも会話が成立しそうだなと思う。

「言葉はなくとも、通じているのだな。本当に君たちの関係はうらやましいよ」
「オレ、ミクリオのことなら何でもわかる自信あるから!」
「恥ずかしいからやめてくれ……」

 顔を赤くしながらも、ミクリオがスレイの傍を離れる様子はない。

「そうだ、戻ってきてから、みんなにまだ言ってなかったことがあったんだ」

 そう言ってスレイは姿勢を正した。導師の難儀はまだあんのか、と仲間達も改めてスレイに向き直る。

「アリーシャ、ありがとう。そして、巻き込んでごめん」

 スレイの口から語られたのは、感謝と謝罪の言葉だった。
アリーシャはすぐさまスレイの手を取って、巻き込まれたということを否定した。むしろ何度も助けられたのだ。おかげで全面戦争は回避した。

「スレイ……巻き込んだのはこちらの方なのに、私こそありがとう。君には感謝してもしきれない」
「ロゼも、一緒に旅してくれて、ありがとう」
「お礼はいいよ、あたしの場合はヒマつぶし兼ねてたし」

 見えている人間たちに感謝した後、スレイは天族たちの気配を探っているようだった。本当に見えていないのだから仕方ない。「この辺にいるよ」と、ロゼとアリーシャが天族たちを囲って助け舟を出すと、ちょうど真ん中あたりを向くように立って、

「ライラ、エドナ、ザビーダ。力を貸してくれてありがとう!」

 最後は結局一人で全部片付けたくせに、こんなときにまで天族に感謝とは。まぁ、そこがスレイが導師たる所以なのかもしれないが。

「スレイさん……」
「別にいいわよ、勝手にやったことだし」
「素直じゃないねぇエドナちゃ……あだっ!」

 そして最後に、スレイは迷い無く自分の左側を向いた。スレイには見えていないはずなのに、ちょうどそこにミクリオはいた。

「ミクリオ、オレの親友でいてくれてありがとう!」
「……恥ずかしいヤツだな、君は」
「同じものを見たり聞いたりできなくても、オレはミクリオのこと忘れたりしないよ」

 いつかロゼに言った言葉だ。
だがスレイはそう言ってからウーンと唸った。

「でもやっぱ、ミクリオが照れてる顔は見たいなぁ……」

 そろそろ、限界だった。主にミクリオが。

 すっかり置き去りにされたロゼとアリーシャは互いに顔を見合わせた。

「スレイってホント……」
「恥ずかしいヤツだな!」
「何となくわかったわ、マオテラスの坊やが三日で復活したワケ」
「きっと、スレイさんだからなのですね」

「ミクリオ! オレの傍にいてくれてありがとう。これからも、よろしくお願いします!」

 スレイの顔面に水の天響術が炸裂した。

「ねぇ、天族の方。アレはいったい何をしていらっしゃるのですか?」

 今はもう、人と天族の距離が近い。こうして気軽に話しかけられるのも、慣れれば楽しいものだ。
ライラは女性の指差す方向に目を向けた。見れば水と地の天族が、地と水の属性武器で大地をガッスガッスと掘り返している光景が見える。水の天族の顔色は耳まで真っ赤だった。

 二人とも恥ずかしさに耐えかねて、ついに直接攻撃に出たらしいが、ほじくり返したところからお花畑に変わっていくのを横から導師さまが「スゲースゲー!」と褒めてホメて褒めまくるものだからたまらない。
これは完全に遊ばれている。何せ相手は大地を器とする天族だ、かなう訳がないではないか。

「ああいうの、墓穴を掘るって言うんじゃねーの」

 そのうち街の子供たちがスコップ片手に参戦しだして、いつの間にかスレイもまじって穴掘り大会が始まっている。墓穴どころか、お花畑量産機と化している。
もうすぐ、ロゼとアリーシャも気づいて騒ぎの中に加わるだろう。

 ライラがスカートのすそを持ち上げるしぐさをすると、隣にいたザビーダもニカッと笑って袖をまくるしぐさをした。袖、無いのに。

「何なにー? 楽しそうなことしてんねーお前らー!」

 女性はぽかんと口をあけたまま、目の前で次つぎお花畑が作られてゆく様を見守った。きっと彼女の目には、水と地の天族の仕業に見えているんだろう。摩訶不思議な現象ではあるが、最初から天族が見えているから、おそれる必要も無い。

「気にしないで下さい。彼らなりの、マオテラス信仰ですわ」

「水かけてよーミクリオー」
「きれいな花だな」
「うん、やっぱり、ミクリオの水がいちばんきれいだな」

 爆発音と共に天高く水柱が立ち上り、レディレイクの空に大きな虹がかかった。

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絵が描ける。小説も書くしゲームも作るし乗馬もするよ。
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