アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

「プロローグ」

投稿日:2010年6月12日 更新日:

 それはまだ未完成だった世界のお話。
いつかに語り継がれ、やがて忘れられたお話。

―――銃声が響いた。それも、一発や二発ではなく、無数の。

 いくつもの銃弾を浴びて、ついに男が膝をつく。
男の虹色の髪は血で汚れ、流れる血が白い衣装を染めて、大地を汚す。すでに死んでいてもおかしくはないほどの怪我だ。
男は片膝をつき、撃たれた左目を手で覆って、しかしそれでも倒れはしなかった。そればかりか、男はいつもの無表情で苦痛の色すら見せない。
残った赤い瞳が、兵士たちをじっと見据えた。

 撃った兵士たちが、たじろいだ。

「何をしている! 早く殺せ!!」

 赤い髪の、若い男が兵士たちにそう指示を出す。
しかし、兵士たちは倒れない不死の男にすっかり動揺してしまい、武器を捨てて逃げ出す者さえ出始めた。

 若い男は舌打ちし、捨てられた兵士の銃を拾い、不死の男に向けて自ら引き金を引いた。
頭に、胸に、腹に、足に。
無数の銃弾を浴びてもなお、男は倒れなかった。
彼の背後には、彼のもっとも大切にしていた少女がいた。
だから、彼は倒れない。倒れるわけにはいかなかった。

「化け物め……」

 苦々しくつぶやいた若い男は銃を捨て、腰の剣を抜いた。
男にとって、彼に直接手を下すことは恐ろしいことだが、ここでとどめを刺し損ねて、後にすべてを明るみにされることの方が恐ろしかった。

 追い詰められているのは、若い男も同じだった。
その時、

「……やめて」

 小さな、少女の声が聞こえた。
この時、不死の男が初めて反応を見せた。

「お願い……もうやめて!」

 男の前に、金色の髪の少女が飛び出した。
怪我をした男を守るかのように、両腕を広げて若い男を止めようとした。だが若い男は少女の抵抗をものともせずに押しのけ、剣を振りかざす。
少女は若い男の剣を持つ腕に飛びついた。しかし、若い男の剣は止まらない。
刀身が禍々しい血の色をしたその剣は、少女のもっとも大切な人の首をはねた。

 ついに、その体が崩れ、倒れる。

「……あ」

 少女もその場にくずおれた。
切り落とされた首は、崖を転がり落ちて、海へと消えた。

 若い男は、倒れた男の体が二度と起き上がってこないことを確認すると、その体も海へと投げ捨てた。

「……どうしてなの」

 若い男は少女の問いかけを無視した。
そしてふと、思い出したように少女に向き直る。

「……お前も同罪だよ、ソフィア」

 若い男はそう言って、容赦なく少女の体を切り捨てた。
斬撃を受けた無抵抗の体はぐらりと倒れ、血を噴き出して、それきり動かなくなった。

 いつの間にか、周囲には誰もいなくなっていた。
後に残ったのは、大地に染み付いた大量の血の跡と、大量の返り血を浴びた若い男ただ一人だった。

「はは、あははは……! 見ろよマリア! 神は……死んだ!!」

 血濡れの男は狂ったように笑い続けた。

 その背後で、大地が不気味な色に染まり、太陽が不自然に傾いているのに気づかぬまま。

―――この日を境にこの世界は、太陽と海と大地を同時に失ったのである。

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好き嫌いの激しい雑食性偏食家。天使と青色1号が好物。脳みその主成分がSFと人外とファンタジーで出来ている。
絵が少し描けます。小説も書きます。
月の住人と同居中。創作国チョコミン党きのこの山派メーデー民ゲーマー。乗馬はじめました。
最近youtubeにゲーム実況動画投稿中。

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