アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

「なんて素敵なバッドエンド」

投稿日:2015年3月6日 更新日:

二次創作 TOZ

ED後と誓約の設定大捏造注意。
無自覚スレミクスレ。全年齢向け。

 災禍の顕主を倒し、災厄の時代は終わった。

 スレイがマオテラスの器となって眠りについてからも、すぐには憑魔は減らず、導師の器たりえる者もしばらくは現れなかった。

 僕ら天族はロゼを新たな器として、穢れを祓う旅をし続けた。
穢れの元となる人間のいさかいの方を静めるというのも、なかなかに良い案だったと思うが、それでも、目に見えて憑魔が減ることはなく、大地にマオテラスの加護が戻る気配もないまま、ロゼはその短い生涯を静かに閉ざした。

 しかし落ち込んでばかりもいられない。
それからはポツポツと導師の資質を持つ者も現れるようになってきて、ライラは主神に、僕らは陪神に。方法を変え、器を変えながら、旅を続けた。何年も、何十年も……

 スレイがいなくなってからも、こんなに過酷な旅を続けることになるとは、正直、思っていなかった。
けれどスレイの、ロゼの、アリーシャの、僕たちにかかわった大勢の人間と天族たちのしたことを無駄にしないためにも、ここで立ち止まることは許されない。
何年かかろうとも、僕たちは旅を続ける。スレイの目指した世界を信じて。

―――それから百年。スレイは目覚めない。
マオテラスも、大地に戻らない。憑魔も減らない。
けれど確実に、天族を知覚する人間は増え、導師だけは確かに増えた。それだけが希望だった。

 僕はかつての旅の仲間たちに、僕の考えを打ち明けた。

 足りないのは、浄化の力だと。それを担う主神の数ではないのかと。

 特別な誓約をかけて手に入れる、天族の浄化の力。今はライラしか持たない力。
その力を、僕は求めた。

「それが何を意味するか、わかっているの? ミクリオボーヤ」

 久しぶりに略称じゃないあだ名で呼ばれて、思わず吹きだす。

「笑い事じゃねーってミク坊。お前は、ライラとは違う」

 いつもはチャラけたザビーダも、少し怒ったような口調で言う。そして、ライラも。

「私は、長い間生きてきましたわ。誓約の条件に見合うくらい、永く」
「わかってるよ」

 きっと三人とも引き止めたいのだろう。声は穏やかで、真剣だった。たった百数年生きた程度の天族なんて、この三人にとってはいつまでも赤子同然なんだろう。

「でも、もう決めたんだ。前に進むって」

 そのために、自分の中の大半を占める大切なものを丸ごと差し出したって構わない。
だってスレイは自分の身を、その人生を世界に捧げたのに、幼馴染である僕が、スレイの時間と引き換えに得た世界で、対価を何も支払わないなんておかしいじゃないか。

「違うでしょうミクリオ。誓約ってそういうものじゃないでしょう!?」

 珍しく焦った様子のエドナがライラに同意を求める。しかし、ライラはうつむいたまま目を伏せた。
それほど長く生きてはいない天族が浄化の力を得るための誓約は、きっと何かを口にしないなどという優しいものでは足りない。
自分の中から何かを永遠に失ってしまうような、残酷な方法が確実だ。

「スレイの目が覚めたとき、あの日のあの決断は正しかったんだって、胸をはって言えるくらい素晴らしい世界にして見せたいんだ」

(スレイは起きたら言ってくれるはずなんだ、一緒に世界中の遺跡を探検しようって)

「足手まといにはなりたくない。僕はスレイの力になりたい。浄化の力を得るためなら、差し出すよ。それに見合うだけの対価……」

(たとえ全部失っても、それだけは残るって知ってるんだ)

「スレイとの思い出のすべてを」

 何度経験しても、別れというのはつらいものだ。
自分にとっては何人目の導師かということはよく思い出せないが、どの導師との旅も、とても大切な思い出になっていることは間違いない。

 ハイランドに点在する導師たちの墓に、一つ一つ花をそえながら挨拶と近況報告をし、彼らとの共闘のおかげで穢れの減った大陸をあてもなく旅をする。
今はもう憑魔という存在自体が珍しく、世界は導師を必要としてはいない。しかし浄化の力を求める導師は少なからず存在していて、そういう者を探すのも旅の目的のひとつだ。

 大陸にはマオテラスの加護が満ち溢れ、人も世界も天族も、確実に良い方向に向かっていると思う。人間の世界では相変わらず、多少のいさかい程度はあるものの、これはかつての仲間の天族と導師たちと誓い合った理想の世界そのものだ。

 おかげで導師を持たない間は、趣味の遺跡探索に没頭することが出来る。愛読書である天遺見聞録に載っている遺跡はもうずいぶん回ったが、知れば知るほど謎が深まるのが遺跡の醍醐味だ。こういうとき、遺跡について深く語れる友がいないというのはなんだかむなしい。付きあいの長い天族たちはみな、ミクリオが遺跡について語りだすと「また始まった」と言わんばかりの嫌そうな顔をするので。

 ふと、目の端に崩れた石柱が見えて、自称遺跡探検家の血が騒いだ。ただの岩だと思っていたが、明らかに人為的に刻まれた紋様から、ここが天遺見聞録には載っていない遺跡だと知れる。
石柱の向こうに、伸び放題の草におおわれた石造りの扉を見つけて、是が非でもこれは探索しなければと意気込んだ。

 数世紀にわたって人の入った形跡のない遺跡は珍しい……だからだろう。
うっかり床を踏み抜くなんて失態を犯したのは。

(しまった……!)

 しかし落下の衝撃は一瞬だけで、代わりに腕が引っ張られる感覚。見上げれば、誰かが自分の腕を掴んでいるのが見えた。
導師の紋章の入ったグローブをした手に、もう片方の手も差し出すと、ゆっくりと引き上げられる。間一髪、助かったらしい。

「大丈夫?」

 跳ねた茶髪に、色の多いオレンジの衣装。青年の姿をした、まだ若い天族のようだった。
その割りに導師のグローブをしている事から、元は導師をしていた人間だったのかもしれない。

「ありがとう、助かったよ」
「この遺跡はもうずっと人が入った痕跡はないし、風化も激しいんだ。気をつけた方がいいよ……オレも何回か落ちたけど」

 そう言って彼は自分の頬を掻いた。悪いと思いつつも、思わず笑ってしまう。

「忠告どうも、気を抜いてただけだよ。僕も相当古いのはわかっていた……様式から、アスガード隆盛期以前のものではないかと思っていたから」
「おっ! もしかして、遺跡わかる人!?」

 まるで子供のように彼の目が輝いた。つられてきっと、自分もそんな顔をしているんだろう。自覚がある。

「君こそっ……!」

 うれしくてつい興奮した声が出た。導師たちとの旅ももちろん楽しかったが、やはり遺跡についてはエドナ曰く「遺跡オタク」の自分の議論についてこれる者がいなくて正直寂しかったのだ。

「君は……この遺跡の加護天族?」
「いや、加護天族じゃないのは確かなんだけど、うーん、なりたてっていうか……実はオレも良くわかってないんだ」
「そう……」

 ゴメン、と言って本当に困ったような顔をした彼に、こちらも困ってしまう。その顔をされるとこれ以上聞くことは憚られた。

(確かに、自分も天族になった時の記憶なんてないもんな)

「スレイ」
「え?」
「オレの名前、スレイっていうんだ」
「スレイ……」

 懐かしさを感じ、唇に乗せてみる。なぜだか彼にしっくり来る名前だと思った。

「僕はミクリオ。浄化の力を必要としている導師を探しながら旅をしている」
「へぇ~導師かぁ!」
「まあ、憑魔も減った今となっては、メインは趣味の遺跡探検なんだけどね」
「えぇっ! オレと同じだ!」

 そう言って彼は、ずいぶんとボロボロになった分厚い本を取り出した。見慣れた表紙、天遺見聞録だ。
負けじと自分の本も取り出す。こちらも何度も読み込んでくたびれた、同じ本を。

 スレイと目を合わせる。不思議と呼吸も合った。次に出てくる、言葉も……

「「世界中の遺跡を探検するのがオレ(僕)の夢なんだ!」」

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好き嫌いの激しい雑食性偏食家。天使と青色1号が好物。脳みその主成分がSFと人外とファンタジーで出来ている。
絵が描ける。小説も書くしゲームも作るし乗馬もするよ。
月の住人と同居中。創作国チョコミン党きのこの山派メーデー民ゲーマー。youtubeにゲーム実況動画投稿中。

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