アイオンの鍵

創作好きの絵と文サイト。オト(@oto05i)の日々とウサギ、ゲーム、青い食べ物など。オリジナルイラストとファンタジー小説展示。

「お酒は成人になってから」

投稿日:2021年1月16日 更新日:

カインとカルマと酒場の人々

モブ視点。酔っ払いトーク。

 酒場には情報が集まる。そんなのは世界の常識だ。

 フリーの賞金稼ぎにとって、賞金を稼ぎ続けることは生活を続けるために必須となる。高額な報奨金の掛けられた賞金首をいかに効率よく探し、倒すかが賞金稼ぎの肝なのだ。
賞金首の情報は、街中のポスターなどでも見ることが出来るが、その他ありとあらゆる情報を手に入れるなら、夜、人が集まる時間帯に酒場に入り浸っている方がよっぽど有益な情報を仕入れることが出来る。

「で、いくら賭ける?」

 バーに入って早々絡まれた……空いているからと言って、カウンター席に座ったのは間違いだったのかもしれない。バーテンダーから近いカウンター席に座るのは、おそらくこの酒場の常連たちだ。

 絡んできたのは黒髪の男だった。男の指さす方向には、自分と同じようにカウンター席に座る体格の良い銀髪の男ともう一人、金髪の男……いや、少年だった。お互いショットグラスを手に持っている。なるほど、これから飲み比べの勝負が始まるらしい。
こちらが事情を察したのを見計らって、黒髪の男がもう一度話しかけてくる。

「お兄さん、どっちに賭ける?」

 どちらかと問われて、もう一度横のカウンターを見る。銀髪と金髪……二人とも酒に強い種族の多い北方生まれ特有の白い肌だったが、どう考えても大柄な銀髪の方が酒には強そうだ。体格が良い分、アルコールのまわりは遅く、肝臓が大きい分、分解も早いと見た。
どういう経緯で行われる勝負なのかは知らないが、これは賭けにはならないだろう。懐から金貨を取り出すと、黒髪の男は目を丸くした。

「銀髪の男に、金貨一枚」
「おおっ、お兄さん分かってるね!」

 黒髪の男はすかさず金貨を奪うと、手を高々と掲げて酒場中に宣言した。

「良かったなおまえら! お兄さんが挑戦者に乗ってくれるってよ!!」

 途端にワアアッ、と酒場が盛り上がる。銀髪の方が挑戦者?
カウンターの金髪の少年がこちらを見てニヤリと笑った。
しまった。酒場のやつらは全員グルか……ハメられたのかもしれない。
カウンターの奥でガンッと大きな音がした。銀髪の男がカウンターを殴った音だ。

「馬鹿にしやがって!」

 銀髪の男は勢いよく手の中のショットを飲み干した。続いて金髪の少年もショットグラスを一気に煽る。
勝負が始まってしまった。

 もう金貨を取り戻すことはあきらめて、バーテンダーに酒を注文する。
二人の飲み比べを眺めながら酒を煽ることにした。何となく勝負の結末は分かっていたが、現チャンピオンがこの金髪の少年というのは信じがたい。
いかさまでもするのだろうかと注視するが、そんなぶしつけな視線には構うことなく、スイスイとショットグラスを飲み干していく少年を見ていると、これは本物だなと気づき始める。

 銀髪の男も疑いからか少年を睨みながら飲んでいたが、段々と焦りが見え始めた。同じように気づいてしまったのだろう。少年はいかさまなんてしていない。
銀髪の男の、ショットグラスに手をかけるペースが落ちてきてしまった。

 ギャラリーは面白おかしく金髪の少年をなじり、銀髪の男を応援する素振りを見せるが、実際に賭けたのは少年の方へだろう。おそらく自分と銀髪の男以外は、全員常連で顔見知りの仲だ。
バーテンダーもグルの可能性を考えたが、茶髪の若いバーテンダーは銀髪と金髪二人分の酒を同じ器で同時に作っている。いかさましようが無かった。

 二人とも肌が白いので対比が良くわかる。銀髪の男はあっという間に全身真っ赤になってしまったが、少年の方はほんの少し頬を染めただけであまり顔色が変わらない。
まるで水のグラスのように、アルコール濃度の高い酒を次々飲み干していく。ただの水であっても、あの小さい体のどこにそんなに納まるのか。勝敗の行方よりもそんなことが気になり始めた頃、ついに少年の酒を飲むペースが銀髪の男を追い抜いた。

 酒は、頭では分かっていても、身体が受け付けなくなる時がある。それはもう根性でどうにかできる話じゃない。銀髪の男に、限界が来た。
追い打ちをかけるように、少年が三つのグラスを一気に煽って飲み干す。トン、トン、トンッ、とカウンターに打ちつけられる空のグラスの音が響く。銀髪の男は青くなり、そしてそのまま……カウンターに突っ伏して動かなくなった。

「勝者~、カインくーん!」

 茶髪のバーテンダーが間の抜けた声で勝負の終わりを告げると、ギャラリーたちは一斉に掛け金の分配に黒髪の男の元へ集まった。
やはりほとんど全員が金髪の少年へ賭けていたらしいが、ギャラリーの口から発せられるのは「たまにはヤられろ」だの「とりあえず脱げ」だの卑猥な言葉ばかりだった。いい加減飽きただのという言葉が口々に発せられる様子から、この少年がいかに長い間チャンピオンで居続けたのかは想像に難くない。
少年の方はそんな事は言われ慣れているかのように気にした風もなく、こぶしを突き上げて勝利のガッツポーズをキメている。

「いやぁ、お兄さん残念だったねぇ!」

 少しも残念ではない様子で、黒髪の男はニヤつきながら隣へ座った。すかさずバーテンダーに二杯分酒を注文している様子から、一杯だけは奢ってくれるようだ。

「良いカモだったろう?」
「そんなことは……少ししか思ってないってぇ。まぁ、最近は挑戦者も減ってて退屈してるんだよね。あ、ハイ、これ俺の奢りね」
「どうも」

 目の前に置かれたカクテルに口をつけると、強烈なアルコールに目がクラクラした。勝負であの二人が飲んでいた酒が使われたカクテルだ。自分ならショットで飲んだら二、三杯で倒れる自信がある。
よくこんなものを水みたいにガバガバ飲めたものだと顔を上げると、いつの間にか金髪の少年の方は黒髪の男の隣に席を移していた。銀髪の男はまだ倒れたままだ。

「よぉ~チビ助、おつかれ」

 黒髪の男が金髪の少年にもたれ掛かるが、少年の方はまるで慣れているかのように相手にしない。
先ほどさんざん強い酒を飲んで勝負したばかりだというのに、カウンター向こうのバーテンダーに向かってさらに酒をオーダーした。

「カルマ、マティーニ作って」
「カインくん、まだ飲むの? あ、さっきのお酒代どうしようか」
「あの男に全部つけてやれ」

 少年が指し示したのは未だに倒れたままの銀髪の男だ。
金髪の少年は慣れた手つきで財布の中身を数えている。その財布も銀髪の男から抜き取ったものだ。勝負に負けて財布もとられ、銀髪の男は先ほどの勝負の酒代も払う羽目になるのだ。

「それ、盗んだのか?」

 黒髪の男がカインと呼ばれた少年が持つ財布を指して言うので、少年はあきれたように財布の中身をぶちまけて言う。

「何言ってんだ、勝負の対価だよ。おれには身体を賭けろって言ったのに、中身は結局これっぽっち……」

 財布の中身は銀貨が四枚と、使えるか分からない魔石が数個。それだけだった。金貨は一枚もない。

「タダ酒が飲めただけ良しとするか……」

 金髪の少年はバーテンダーから注文したカクテルを受け取って、一気に煽った。
遠目には気づかなかったが、近くで見るとほんの少し肌は赤く染まっている。酒が全く効かない訳ではなく、少しは酔っているという事か。元が白いので、ほんの少しの変化もよく分かる。
まじまじと見ていると、視線に気づいたのか少年はこちらを振り返った。

「お兄さん、今からでも勝負、してみる?」

 蠱惑的な笑みに釣られ、ふと考える。
こちらはまだ少し飲んだだけだが、少年は既に先ほどの勝負で大量に飲んでいる。あれほど飲んだ後でなら、あるいは……

 賞金稼ぎの勘が、この少年に手を出すのは危険だと告げている。
こちらに向かって細められる少年の赤い瞳、彼の瞳の縦に細長い瞳孔が、少しも酒で緩んでいない事に気が付いた。

「いや、やめておく」
「ざんねん!」

 そう言って彼は、俺の飲みかけのカクテルを奪うと、一気に飲み干してしまった。

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好き嫌いの激しい雑食性偏食家。天使と青色1号が好物。脳みその主成分がSFと人外とファンタジーで出来ている。
絵が描ける。小説も書くしゲームも作るし乗馬もするよ。
月の住人と同居中。創作国チョコミン党きのこの山派メーデー民ゲーマー。youtubeにゲーム実況動画投稿中。

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